何年か前の寒い日にコート外で活動をしたことを思い出した。手つなぎ鬼ごっごだ。そこでの部員は速かった。何に比べて速いかというとコート上での動きに比べてだった。なぜだろうか?
彼らはテニスコートではスタート(走り出し)が遅いことに気がついた。体が硬くなっていて、鬼ごっご時のような自然な走りができていなかったのだ。
「テニスコートではバランスを崩してはいけないと思う?」
「その通りです。打球時にはバランスを崩してはいけないからです。」
「では、どのように移動するのかな?」
「足で地面を力強く蹴るのです。」
「陸上100m走のスタートを見てごらん。思い切りバランスを崩した前傾姿勢をとっているよ。バランスを崩して体重を利用することがもっとも速い走りにつながるのだよ。
重力という最も大きな力を利用するのさ。バランスを崩して走りだすこと。バランスを保って打球すること。これらの連続的なプレーがテニスゲームだね。」