「風が吹いたので調子が出ませんでした。」A君は嘆いた。勤務先の中学部内戦シングルスは強風の中で行われた。
風は吹くものだし、雨は降って足場は悪くなり、ボールは重くなり、太陽はまぶしいし、気温が上がって暑いこともある。思い通りにいかないことはいくらでもある。
思い通りにいかない極めつけは相手だ。どこに打ってくるかこちらにはわからない。こちらどころか、フレームショットなど、本人すらもわからないことがある。球出し練習のような状況は全くない。
かつて、テニス雑誌の特派員として世界の大会をレポートしていたことがある。台風の日も試合があったし、深夜まで試合が続いたことがあった。そんな悪条件ではほとんどシードダウンが起こらなかった。そんな状況で相手よりも数ポイント多くとればいいのがテニスゲームだとわかった。シード選手は体得していたのだ。